pHは生命活動に深く関わる本質的な化学パラメーターです。
私たちは、pH変化への応答(pHストレス応答)と、
それを生命現象に活用する仕組み(pHシグナル)の解明に
取り組んでいます。
S. P. L. Sørensen(1869-1939)は、H⁺がタンパク質変性の主因(すなわち毒)であることを示し、pHという概念を提唱しました。
以来、細胞内pHは一定であるべきという常識が広まりました。
しかし近年の技術革新により細胞内pHが変動しうることが明らかとなり、「細胞内pHは常に一定である」という固定観念は覆されつつあります。
CO₂は地球上の主要なpH変動因子です。
地球の歴史を通じてCO₂濃度は変動し、それに伴う環境pHの変化が細胞内pHに影響し、生物のストレス要因となってきたと考えられます。
エネルギー代謝による酸の生成
有機物はCO₂と水から合成され、その分解である代謝は必然的にCO₂(すなわち酸)を生じます。
つまり生命は本質的に、細胞内pHの変動というストレスに常にさらされながら生きているのです。
近年では、かつて“毒”とされたpH変化が、生命によって能動的に生み出され、発生の形づくりなどを制御するシグナルとして機能することも分かってきました。
このような状況を踏まえ、
「細胞内pHは不変である」という固定観念を
捨てるべき時が来たと考え、私たちは立ち上がりました。
pH ストレス誘導型転写因子の同定
植物のpH ストレス応答機構
地球史から紐解く pH ストレス応答機構
細胞内 pH 場の能動的形成を介したpH シグナル誘導
細胞外プロトン場形成による pH シグナル
重炭酸イオン受容体を介したpH シグナル
生物個体内のライブ pH 計測・可視化技術の開発
pH 関連代謝物のカタログ化および計測技術開発
局所 pH シグナルの人為的操作・計測技術の開発